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  • 建築家 永木 靖久 Nagaki Yasuhisa

    神戸大学大学院工学研究科を修了後、建築家毛綱毅曠氏に師事、現在オスモ&エーデル株式会社ハウジング事業部設計部長。
    デザインと高度な温熱環境を両立した「美しい省エネ住宅」の設計を行う。

  • 省エネ建築診断士 吉田 貴紀 Yoshida Takanori

    大手住宅メーカーで営業を経験した後、オスモ&エーデル入社。
    ドイツ建材を通じて様々な設計、建築に携わり、
    高性能住宅を追求する全国の団体に参画。

  • 代表取締役 及川 英治 Oikawa Eiji

    オスモ&エーデルに入社より25年に渡りドイツ建材の輸入販売に携わる。
    現在、代表取締役として、オスモ&エーデルのビジネスマネジメントを行う。

Q7. なぜドイツなのですか? 

Yoshida Takanori

これもよく質問されますね。 

Oikawa Eiji

ワールドワイドに展開されるプロダクトはたくさんあると思いますが、そのイメージを代表する国というのがありますよね。
たとえばワインといえばフランス、車といえばドイツ、ウィスキーといえばイギリス、コーヒーといえばブラジル、葉巻といえばキューバ、造船といえば日本、みたいなかんじです。
それと同じで建築といえばドイツ、というのが僕たちの認識です。 

Nagaki Yasuhisa

でもドイツのイメージがなかったとよく言われます。
僕たちが建築のイメージがドイツだと考えるのは建築の歴史を知っているからだと思うんです。 

Oikawa Eiji

それだと現代建築はドイツですし、古典建築だとイタリアということになりますね。 

Nagaki Yasuhisa

建築を学ぶ学生は西洋建築史という講座でその歴史を学びます。ギリシャ・ローマから始まり、ロマネスク 、ゴシック、ルネサンス、バロックと学びます。新古典主義を経てモダニズム建築が生まれ、現在も大きくはそのなかにいます。
そのモダニズムを主導したのがドイツのバウハウスという教育機関だということを学びます。

Oikawa Eiji

なるほど、バウハウスを知っているかどうか、ですね。 

Yoshida Takanori

でもそれは都市を彩る比較的大きな建築の世界の話で、住宅というのはちょっと違うのではないですか。  

Nagaki Yasuhisa

住宅は建築のなかでもっともローカルなものなので、それぞれのローカルのなかで独自に歴史を刻んできたはずです。
でも僕たちは現代住宅についてもやはりドイツのイメージを持っています。 

Yoshida Takanori

そうなんです、そこがたいせつなポイントだと思います。
たしかに住宅はローカルなので、地理横断的に住宅のデザインを覆う思想のようなものは生まれにくいですよね。
だから住宅デザインはいまだにモダニズムありクラシックあり、民家風ありと百花繚乱の様子です。 

Oikawa Eiji

それに住宅のデザインはプロの手によらないことが多いことも理由のひとつですね。 

Yoshida Takanori

その通りです。けれどもおそらくは建築史上初めて建てる場所によらず住宅全体を覆う思想が生まれています。
それがエコ住宅です。エネルギー問題はローカルだけの問題ではなくグローバルの問題でもあるからです。
そしてそのエコ住宅を世界に先駆けて推進し、現在もそのトップランナーとして世界を引っ張っているのがドイツです。
エコ住宅はドイツなしでは語れません。 

Oikawa Eiji

かんたんにドイツのエコ住宅の現状を教えてください。 

Yoshida Takanori

ドイツでは、建築物での省エネと自然エネルギーの利用を促進させるために、法律の整備や財政支援が行われています。東西ドイツが再統一されてからというもの、国家として「環境にやさしい街づくり」を推進しており、とくにエネルギー利用量の約4割を占めている建築物は、ドイツの省エネを語るうえで外せない項目のひとつです。
また、ドイツでの最終エネルギーの約3割は家庭での消費であるとされており、建築物での最終エネルギーの4分の3は室内暖房で、とくに住宅での暖房消費が大半を占めています。 

ドイツでは、2020年11月に法整備が行われました。建築物省エネ法、建築物省エネ令、再エネ熱法の3つが統合され、建築物エネルギー法が制定されました。その法令の中で、新築の建築物、既存の建築物、エネルギー性能証明書に関する規定がまとめられました。ドイツにおいて、新築はすべて環境建築と呼んで差し支えありません。
そもそも環境建築とは、国が定めた省エネ政令の基準を満たした建築物のことを指し、日本と比べても非常に高い基準内容となっています。実際、ドイツでは新築の建築物を建設する際には・年間一次エネルギー需要・断熱・自然エネルギー利用、これら3つの要件が設定されており、外皮区分別熱貫流率の上限値を規定しています。  

Oikawa Eiji

ドイツは国をあげて、建物の省エネ化、自然エネルギーの有効活用に取り組んでいるのですね。
整備された法令の内容や、積極的に進められている財政支援とその規模を見ると、ドイツが環境大国と呼ばれる所以もわかります。
一方、日本はまだ省エネ住宅、環境への対応が不十分といわざるを得ません。人口や環境、文化も違うことから一概に比較するべきではないかもしれませんが、それでも省エネ性能を高め、環境にも家計にもやさしい建築物を増やしていくためには日本がドイツに見習うべきところは大きいと思います。