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  • 建築家 永木 靖久 Nagaki Yasuhisa

    神戸大学大学院工学研究科を修了後、建築家毛綱毅曠氏に師事、現在オスモ&エーデル株式会社ハウジング事業部設計部長。
    デザインと高度な温熱環境を両立した「美しい省エネ住宅」の設計を行う。

  • 省エネ建築診断士 吉田 貴紀 Yoshida Takanori

    大手住宅メーカーで営業を経験した後、オスモ&エーデル入社。
    ドイツ建材を通じて様々な設計、建築に携わり、
    高性能住宅を追求する全国の団体に参画。

  • 代表取締役 及川 英治 Oikawa Eiji

    オスモ&エーデルに入社より25年に渡りドイツ建材の輸入販売に携わる。
    現在、代表取締役として、オスモ&エーデルのビジネスマネジメントを行う。

Q8. ドイツの家の 4 つの基本建材について具体的に教えてください。

Yoshida Takanori

その4建材を使うことがイコール、ドイツの家ではないという話をしたばかりですね。

Nagaki Yasuhisa

とはいっても他社との違いということでは理解しやすいですよね。くりかえしになりますが、4建材というのは自然塗料のオスモカラー、無垢材のオスモフローリング、高性能樹脂サッシのフェンスター、外付けブラインドのヴァレーマです。ドイツの家ではこの4建材を必ず使います。

Yoshida Takanori

一番よく知られているのはやはりオスモカラーでしょうね。特にDIYをされる方はもう普通に知っていただいていると思います。ひまわり油などの自然の植物油由来の木材保護塗料です。プラスチックのような塗膜をつくる塗料とは違い、植物油を木部に浸透させて木を表面と内側から保護します。無垢材の良さを最大限に引き出す塗料です。

Nagaki Yasuhisa

塗料にこだわるというのは他社にはない特徴ですね。オスモフローリングにはもちろんオスモカラーが塗布されていますが、その性能の高さにはいつも驚きますね。日本の住宅のフローリングは一般的に複合フローリングとよばれるもので、基材の上に薄くスライスした単板を貼り合わせたものです。その上にウレタン塗装で薄い膜をつくっています。日本の住宅で、冬の特に窓際の床が冷たいのはこれが原因ではないかと思われます。性能のよくないアルミサッシの表面で冷やされた空気は重くなるので床に落ちていき、複合フローリングのウレタン塗装を冷やします。人がいつも接しているのは床ですので足裏から温度が奪われ、底冷えすることになります。

Yoshida Takanori

オスモカラーは膜をつくらないのでオスモフローリングは暖かいですよね。そもそもドイツの家の窓は高性能な樹脂サッシなので表面の空気は冷えないです。それに夏も複合フローリングのようなベタベタした感じがなくサラっとしているのもいいです。ときどき無垢床にウレタン塗装をかけてしまう人がいますがもったいないのでやめたほうがよいですね。木の呼吸を止めてしまいます。オスモカラーは自然塗料なのに撥水性や防汚性能が非常に高い驚くべき塗料です。

Oikawa Eiji

オスモカラーを塗装した木材とウレタンを塗装した木材、それに無塗装の木材の表面について動摩擦係数を計測した研究結果があります。それによると動摩擦係数のもっとも小さかったのがオスモカラー塗装した木材表面で、もっとも大きかったのがウレタン塗装の木材表面でした。これはオスモカラー塗装の木材表面がなめらかであり、ウレタン塗装の木材表面にはきしみ感があるという意味です。触覚という観点からもオスモカラーの気持ちよさが証明されています。またオスモカラーは自然塗料としてよく知っていただいていますが、それは自然だからよい塗料だということではないということもお伝えしたいと思います。オスモカラーが高い性能をもっているのはドイツの優秀な科学者の不断の研究の結果、生み出されたものです。

Yoshida Takanori

そのほかのオスモフローリングの特徴はオーク材であることと厚みが21ミリもあるということですね。日本の無垢フローリングは12ミリから15ミリまでが一般的です。ドイツの家ではコストに合わせていくつかの選択肢がありますが、基本は21ミリです。またオークは耐久性や耐水性に優れ木目も美しいですね。

Nagaki Yasuhisa

踏み心地がちがいますね。とてもどっしりとしています。お好みもあると思いますが僕は床材としてはある程度の硬さと重さのあるオークが最適だと思っています。傷も比較的つきにくいですし、経年によって魅力と味わいが増していく床なので一生モノだと思います。ドイツの家ではキッチンや脱衣所など汚れや水の多い場所にも使います。メンテナンスもむつかしくなく、ウォッシュアンドケアーという専用の水拭き洗剤で3週間に1度程度モップかけするだけです。

Oikawa Eiji

高性能樹脂サッシのフェンスターと外付けブラインドのヴァレーマはもっともドイツの家を特徴づける建材といえるのではないでしょうか。

Nagaki Yasuhisa

ドイツの家では南側に可能なかぎり大きい窓を設計します。太陽の熱や光、風といった自然エネルギーを建物に取り入れるためでそのために窓は大きければ大きいほどよいのですが、これを一般的なアルミサッシでやってしまうと大変なことになってしまいます。窓を大きくすることで室内を暖かくするには、窓から取り込む熱量が窓から逃げる熱量を上まわる必要がありますが、これはかなりハードルが高い内容です。高性能樹脂サッシのフェンスターはそれが可能な窓なのです。

Yoshida Takanori

大きな窓で室内が暖かくなったとして、次に問題となるのは夏の期間です。当然大きな窓だと簡単にオーバーヒートしてしまいます。このオーバーヒートを考慮していない工務店さんは意外なほど多いです。あるいは深い庇で対応できるとする工務店さんも多いですね。庇はなにも考慮しないよりはずいぶんといいですが、それで万事OKとはならないと思います。たとえば春分と秋分では太陽が出ている時間も南中高度も同じですが、春分は寒く秋分は暑いですね。庇ではそれを一律にしかカットできないのです。外付けブラインドのヴァレーマならその状況に合わせてスラット(羽)の角度を調整することで、最適な室内環境を自在につくることができるわけですからヴァレーマの優位性は明らかです。

Oikawa Eiji

家をつくるときにどんな窓になるかについてもっと意識をもってほしいと思いますね。日本ではアルミサッシまたはアルミ樹脂複合サッシがいまだに主流となっていますが、先進国でそんな国はありません。ほとんどの国では樹脂サッシが主流で北欧の一部で木製サッシが多いという状況です。日本でも北海道だけがほぼすべて樹脂サッシです。これがどういう意味なのか考えていただきたいと思いますね。またブラインドが外付けであることは欧米ではスタンダードです。外付けであることで日射エネルギーの80%をカットすることができます。日本でよく見られる室内側のブラインドはすでに外側のガラスを通して日射エネルギーが入ってしまっているので効果的ではありません。

Nagaki Yasuhisa

窓の性能を知るにはUw(窓の熱貫流率)を調べます。小さいほうが高性能です。アルミサッシのペアガラスで3.5くらい、アルミ樹脂複合サッシのペアガラスで2.0くらいでしょうか。シングルガラスはありえないのでたぶんもうないんじゃないかな。ドイツの家ではコストと立地によってペアガラスを使いますが、基本はトリプルガラスでそのUwは0.74です。ちなみにドイツではUw1.3より性能が悪い窓はそもそも販売を禁止されているので日本のアルミサッシやアルミ樹脂複合サッシはドイツでは販売できません。

Yoshida Takanori

それにドイツの窓は開閉方式も特徴的ですね。ドレーキップといって内開き(ドレー)と内倒し(キップ)の両方が可能です。日本の窓は障子からの影響なのか引き違いが多いですよね。引き違いは開口部を自由に設定できるという優位性はあるものの気密性や遮音性が悪く、高性能住宅には向きません。ドレーキップは気密性も遮音性もとても高いので安心して使えます。

Oikawa Eiji

日本では24時間換気が義務づけられているので換気のために窓を開ける必要はありませんよね。とはいっても気候のよい時期は開けると思うのです。機械で空気が入れ替わっていることは理解できても、朝起きたら少し風を感じるためにも窓は開けたいですよね。そのときにキップで窓を開けるのはとても気持ちよいです。なんと言えばよいのか、穏やかに空気が動くというかんじです。それに多少の雨だと室内に入り込まないので快適な気温のときはぜひ雨を感じていただくのもよいですね。ドイツの家は超高性能ですが自然を感じるということも高性能であることと同じくらい重要だと思うのです。それにはドレーキップの窓がとても役立ちます。ところで設計上のコツみたいなのはありますか?

Nagaki Yasuhisa

ドレーキップはどうしてもコストがかかるので大型窓の場合、比較的コスト安のFIXと上手く合わせることですね。それにサイズを合わせた大型のヴァレーマを加えます。小窓の場合は単窓でさいきん取り扱いを始めたツインラインが最適です。トリプルガラスの外側に小型の内蔵型ブラインドが仕込まれておりその外側に保護のためのガラスがもう1枚あるので、ガラスの数は4枚になります。それでも小窓とヴァレーマの組み合わせより少しコスト安となるのでおすすめですね。ヴァレーマまたはツインラインの方位ですが理想的なのはもちろん全方位です。夏は東西より北にふれた位置から太陽はのぼり、また沈みます。ですから案外北側にも日射はあるのです。とはいえコストを考えると優先順位をもつことがたいせつです。南側は大型窓がくるのでマストです。それ以外の方位は窓の大きさを考えながら適宜ですね。ただし冬の日射量は南が最大ですが夏の日射量は南より東西のほうが大きいのは知っておくべきです。ですので東西の窓はできるだけ小さくというのが温熱的には教科書ですが、たとえば朝の光をたっぷり受けたい、日没の橙の光がとても好き、なによりその方向に取り入れたい美しい風景がある、といった場合は躊躇なく大型の窓にすればよいと思います。ドイツの家にはヴァレーマがあるのでなんとかなります。

Yoshida Takanori

それにヴァレーマは夏だけのものとは考えないほうがよいですね。冬の光は日射角度は低いのでとても眩しいです。ヴァレーマはそれを調整することにも役立ちます。

Oikawa Eiji

じつはドイツの家にお住まいのお客様に聞くといちばん採用してよかったと思うのはヴァレーマだそうです。仕掛け的なおもしろさもあるし、なにより自身の好みに合わせて自然と一体化していく過程を楽しむことができるのがよいのだそうです。

4つの建材の詳しい情報は下記のリンクのカタログをぜひご覧ください。

オスモカラー
https://osmo-edel.jp/wp/wp-content/uploads/osmocolor_catalog20240222.pdf

オスモフローリング
https://osmo-edel.jp/wp/wp-content/uploads/flooring_catalog202204.pdf

フェンスター
https://osmo-edel.jp/wp/wp-content/uploads/FINSTRAL_catalog_vol2.pdf

ヴァレーマ
https://osmo-edel.jp/wp/wp-content/uploads/warema_catalog_2103.pdf