Design
Concept

ドイツの家が考える
デザインと性能の両立

―ドイツの家とはなにかということを、これから家づくりを考えている方にわかりやすく伝えていければと思います。

なんといってもデザインと性能の両立です。
ドイツの家が提供したいのは「暮らしの理想」なのですが、良質なデザインは暮らしにとって欠かせないものです。その良質なデザインを実現するためには高いレベルの性能が必要だということです。

逆に言うとたとえ高性能な住宅であったとしても、良質なデザインが実現できていなければそれは「暮らしの理想」とはいえないということになります。

ドイツの家は日本におけるトップクラスの性能をもっていますが、その性能を誇るのではなくそのデザインの良さをお伝えしたいと思います。

―ではドイツの家が考えるデザインとはどのようなものでしょうか。

環境に対してローインパクト、大きな負荷を与えない暮らしということ、同時に環境に対してハイコンタクト、周辺の自然に対して高い親和性をもつということです。そのために不可欠なのがドイツの家の最大の特徴である巨大な窓と外付ブラインドによる窓システムです。

実は大きな開口部で自然と親和性を持つというのは日本建築の特徴であり伝統的に日本人はそのように暮らしてきました。
ただ寒さや暑さに対しては無防備でいわば我慢のうえに成り立ってきた暮らしであったり、あるいは機械による大きなエネルギーを浪費しながらの暮らしであったわけです。

ドイツの家の窓システムはとても重く、その高い剛性ゆえに大型化が可能で周辺の自然と一体となることができます。
またその高い性能で室内の暖気や冷気を逃がすことがありません。同時に冬季は太陽エネルギーをたくさん取り込み、夏季は外付ブラインドで適正に制御することができるのです。

つまりドイツの家では自然と一体となって暮らすことに我慢もエネルギーの浪費も必要ではないのです。

ドイツの家の
合理性と快適性

―自然エネルギーや景色を借りるという発想でデザインと性能を考えるということがドイツの家の中心的な考え方ですね。
 これは他にはないかなり特徴的な考えだと思います。

自然の力というのはどんな場所であっても少なからず存在するものですからそれを使わないという選択はないのです。ですから自然エネルギーを活用するのは合理的な判断だと思います。

またエネルギーを無駄遣いしないというのもだれも疑問をもたない合理性をもっているといっていいでしょう。ただ自然を活用というと「自然派」のような印象を持たれてしまうかもしれませんが、それは違います。

自然の力というのはかなり乱暴なものですよね。たとえ寒冬や暑夏や嵐など自然がいくら乱暴にふるまったとしてもドイツの家ではそれに気づかないほどに快適な室内環境である必要があります。それに無造作に外部に開放できる時期というのはますます限定的になりつつあります。そのうえで乱暴な自然のなかで有益な部分、光や熱や風などだけをとりだして「暮らしの理想」に役立てるのです。

自然素材を使えば快適な家になると考える人もいますが、それは疑問です。ドイツの家でも自然塗料オスモカラーや無垢材オスモフローリングを使いますが、そもそもたとえばオスモカラーの快適性や機能性は単純に自然素材だからというわけではありません。それはドイツの優秀な科学者の不断の研究の結果生まれてくるものです。家づくりというと工学的な側面に注目されがちですが、ドイツの家は科学的な考えで成り立っていると理解いただきたいと思います。

環境を買うということ、
資産を買うということ

―自然との調和を合理的に考えること、そして科学的に自然を捉えることなのですね。
 その結果としての住まいは具体的にどのようになりますか。

ドイツの家は完璧に快適な室内環境でありつつ自然と一体となることを目指しているので住まいは可能なかぎり大きく、天井は高いほうがいいと考えます。

太陽のエネルギーを最大限取り入れるために主にリビングの南側には巨大な窓が配置されます。人力で運ぶことは不可能なため必ずクレーン車が必要となります。その巨大な窓の外側には冬至用に考えられた深い庇と外付ブラインドがつきます。深い庇の下はリビングが1階の場合はテラス、2階の場合はベランダとなりいずれも中間領域の役割をはたします。

これがドイツの家の基本的なカタチです。このカタチは建築家(あるいはお客様)の個人的な趣味嗜好によるものではなく、合理的に自然と一体となるための「普遍的な箱」であり、ここでの建築家の仕事は社会的資産のためにこのカタチを美しく配置配列することに限られます。その意味でドイツの家は一般的な「家」というよりも「環境」そのものだと考えていただくのがよいと思います。

ドイツの家のカタチが「環境」であるということをご理解いただいた上で、内部空間については「資産」からお伝えします。カタチと異なり内部空間は建築家とお客様の共同作業の場ですが、できるだけ余白のあるおおらかな設計としたいと考えます。余白のある家は万人に適した家です。一生に一度の家づくりと考える方は多いですが、欧米ではライフスタイルの変化に応じて何度も住まいを変えることが一般的で、それを考慮したメンテナンスを行います。売ることを前提にすることは住まいを「資産」と考えるということです。その資産価値を下げないためのメンテナンスです。

日本では既存の家の価値は下がるものだと認識されていますがよく知られるように欧米ではそうではありませんし、日本もその方向へとシフトしていくと考えられます。建築費は今後益々上がっていくので今までのようにすべての人がいつかは持家を、と考えることはできなくなります。(高性能で高品質な終の住まいとしての賃貸住宅の重要性が問われるでしょう)そうなると既存の家の価値は下がりにくくなりすでにその兆候はあると感じています。またドイツなど多くの国では住宅の売買にその住宅の性能を表示する義務があるので高い性能をもつ住宅ほど高く売れることになり、日本もいずれそうなります。

ドイツの家のカタチは高い性能をもつことで資産価値をすでに担保していますが内部空間の資産価値ではだれでも使いやすいということが重要となります。一般的にはユニバーサルデザインやdesign for allと呼ばれるものがそれにあたります。

お客様がこだわった間取りや動線にしたい気持ちはよく理解できますが、あまりに個人的な内容にしすぎることは将来の資産価値を下げてしまうおそれがあることもご理解いただき、建築家とプランニングを楽しんでいただければと思います。

つまりドイツの家をつくるということはお客様にとって「環境」と「資産」を買うということなのです。