ドイツの家が考えるデザインと性能の両立 Dialog
Talk Member
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建築家 永木 靖久 Nagaki Yasuhisa
神戸大学大学院工学研究科を修了後、建築家毛綱毅曠氏に師事、現在オスモ&エーデル株式会社ハウジング事業部設計部長。
デザインと高度な温熱環境を両立した「美しい省エネ住宅」の設計を行う。 -
省エネ建築診断士 吉田 貴紀 Yoshida Takanori
大手住宅メーカーで営業を経験した後、オスモ&エーデル入社。
ドイツ建材を通じて様々な設計、建築に携わり、
高性能住宅を追求する全国の団体に参画。 -
代表取締役 及川 英治 Oikawa Eiji
オスモ&エーデルに入社より25年に渡りドイツ建材の輸入販売に携わる。
現在、代表取締役として、オスモ&エーデルのビジネスマネジメントを行う。
Q9. ドイツの家はハウスメーカーですか?工務店ですか?
いちばん多い誤解がハウスメーカーが家をつくる会社だというものですよね。たしかに家をつくるのだけれど、実際に工事をするのは下請工務店であって、ハウスメーカーはいわばプロデュースをする会社ですよね。
それに対して工務店は自分たちで工事をするのでわかりやすいですね。
日本では住宅展示場のためかハウスメーカーの存在感が大きいのですが、全国の住宅着工数のなかでハウスメーカーの占める割合は25%程度ですね。それに対して工務店は50%くらいあります。これは国交省が示しているのでかなり正確なところだと思います。設計事務所の割合はよくわかりませんが、4%くらいと言われています。
ドイツの家は自社施工しているので工務店です。自社施工範囲外では設計事務所ですけれど。ハウスメーカーには一応定義があって年間300棟を供給するということになっています。ドイツの家は自社施工範囲内で年間10棟程度としており、それ以上はお話しをいただいても少し待っていただく状況です。
年間10棟というのは、高いグレードを維持するためにはそれくらいに絞ったほうがよいという僕の判断です。
会社として棟数を増やしてより大きな利益を得ることより、ひとつひとつのプロジェクトを丁寧に仕上げていきたいという思いからそうしています。
たしかにドイツの家は定義としては工務店なのですが、一般的な工務店とはかなり違うと思います。母体が輸入商社なので高性能なドイツ建材を自ら持っているという一般的な工務店にはない特徴があり、これはお客様にとってもおそらく想像以上の大きな価値となっています。工務店はすべての建材を商社から買って建築をするわけですが、商社はメーカーあるいは輸入商社から建材を買っているわけです。
つまりひとつの建材がお客様のもとにくるまでにメーカー、商社、工務店それぞれの利益が乗ってくるわけですが、僕たちはそれを直接仕入れてそのまま建築に使っているわけです。しかもその建材は窓と床という建物の性能とデザインに深くコミットする高価値のもので、そのコストを抑えることができるのはとても大きいですね。
もうひとつドイツの家は設計事務所としての側面もあります。工務店としての自社施工の範囲はどうしても限られます。ドイツの家を展開するハウジング事業部のある兵庫県の本社から車で1時間程度の範囲です。
ただありがたいことに全国から問い合わせをいただくので、ケースバイケースで対応しています。自社施工範囲外ではドイツの家は設計監理とドイツ建材のサプライヤーとして仕事をさせていただき、工事は近隣の協力工務店さんと直接契約いただくということになります。
またドイツ建材を通じて全国の工務店さんとつながっていることと、ドイツ建材を使っていただく工務店さんは意識や技術が高いので、よい工務店さんをご紹介できるという強みもあります。ただどうしても自社施工範囲内にくらべると設計監理料や交通費等コストはかかるので事前によくご相談いただきたいですね。
経営者として建築コストという意味での一般的な工務店との違いをもうひとつ指摘します。
建築コストというのは建材や各職方、設計者、監督の人件費だけではありません。会社を維持していくための経費があります。
ハウスメーカーの経費はすごい額だと思いますよ。
ドイツの家は組織としてのオスモ&エーデル株式会社のひとつのセクションなので、経費の負担が小さいのです。
これはそのまま建築コストに反映されるものですから、ドイツの家はそのデザインや性能にしてはリーズナブルにご提供できるわけです。
やっぱり特に大手といわれるハウスメーカーは高いですよね。
あれだけたくさんの営業マンをかかえて、コマーシャルを流し全国の展示場でモデルハウスを維持しているわけですから当然です。
その意味では営業マンがいないというのもドイツの家の特徴ですね。ハウスメーカーではお客様に対応するのは営業マンですし、実際の間取りを作るのも営業マンという会社は多いですよね。
ドイツの家では最初から設計者がお客様と会ってお話しを聞くところから始まるわけですから、安心感がちがうというのはよく聞きます。
実際営業マンがつくる間取りと設計者がつくる間取りはまったく違うと思います。営業マンは設計のプロフェッショナルではないのでどうしても提案が画一的で無難なものになりがちです。
ハウスメーカーの提案を受けた多くの人が感じる「モデルハウスとの差」という違和感の原因はこれです。
プロフェッショナルという観点からいうと誰が設計するのか、というのも大きな問題ですよね。
例えばハウスメーカーのようにシリーズが決まっていたとしても実際の設計はカタログのままできるわけではないので、結局は設計者の力量に委ねられるわけです。
一般的にはお客様は設計者を選ぶことはできないし、その情報も持っていません。
ドイツの家は年間10棟少数精鋭ですから基本設計は永木さんひとりが担当します。
それにあまり身内を褒めるのもよくありませんが、彼の経歴はハウスメーカーや一般的な工務店の設計者とはかなりちがいます。
世界的な建築家のもとで修行時代をすごしてそのデザインの感性を磨いたという経歴は何物にも変えがたいものだと思います。
なによりホームページに掲載しているWORKSを見ていただければそのデザイン力は一目瞭然でそこから外れることはないので、お客様がもしそのデザインを気に入っていただけたなら安心してお任せいただけると思います。
高い性能はドイツの家のブランドが、高いデザイン性は永木さんのデザイン力が、それぞれ担保するというわけです。
ハウスメーカーと工務店の話だったのでもうひとつ覚えておかれたほうがよいことをお知らせします。
住宅性能を勉強されたお客様はすぐに気づくのですが、温熱の世界を引っ張っているのはハウスメーカーではなく一部の先進的工務店や設計事務所です。もちろん工務店や設計事務所はいろいろあるので一部の、です。構法など工学の世界はハウスメーカーのほうが先をいく印象です。
温熱レベルは直接コストに関わってくるので多くの受注を必要とするハウスメーカーが一律に上げることは困難だし、施工は下請工務店のレベルを一律に上げることはやはり困難です。
一方で新しい構法の開発には多くの資金と人材が必要なのでハウスメーカーに分があると思います。
いずれにしても家づくりのパートナー選びにはそのパートナーの属性をよくご理解いただくことが大切だと思います。
この区別ってお客様はどれくらい気にされるものなのでしょうね。知っていそうで知らないのがハウスメーカーのような気もしますけれど。