住宅はいかに資産たるものなのか

住宅の資産性について考えてみたいのですが、そもそも資産とは何なのでしょうか。

「資産」を辞書で引くと有形資産、無形資産、金融資産、その他の資産とされていますが、これはつまり「経済的価値を持ち、所有する持ち主に対して将来的に収益もたらしたり、利益を生み出したり、価値を維持増加させる可能性のあるもの」ということになります。

デフレ下の日本においては、一般的に土地はおおよそ失うことのない資産であるのに対して、建っている住宅は常にデッドストックとされ、新築時から少しずつ資産としての価値を失っていくものとされてきました。

これは日本においては長くスクラップアンドビルドの考えのもと住宅供給が行われてきたことが大きな要因であるとされています。

実際にドイツと日本の住宅市場を比べてみると新築の件数はドイツは日本の半分以下、いっぽうでリフォーム市場の総額はドイツは日本の4倍以上であることからも推察され、これはドイツの人口が日本の70%程度であることを考慮したとしてもかなり特徴的であるといえます。

しかし近い将来日本でも人口減少、建築費の増大、エネルギー問題への対応などによってスクラップアンドビルドの考えを改め、新築住宅は品質の良いもののみがその総数を減らしつつ供給されていくことになります。(同時に品質の良い賃貸住宅の供給も重要になります)

それは住宅自体の価値は時間とともに失われていくという現在の価値観が変わることを意味しています。

ここで「住宅の資産性」についてもう一歩違う視点を加えたいと思います。
実はこのコラムでお伝えしたいのはこちら、「住宅と人的資本についての関係」です。

人的資本とは個人や集団が持つ知識、スキル、経験、健康、教育、能力などの資源のことで、個人の収入やキャリアの発展に直接影響を与えるものです。

本来、将来的価値を生む資産の代表格は人的資本であり、それが極めて大きくかつハイパフォーマンスであることは言うまでもないことです。
より高いパフォーマンスを発揮するためには、環境が重要なのです。

集中力、忍耐力、それを支える健康状態がより良い状態を維持できる環境が伴わなければ、場合によっては本来持っている可能性というパフォーマンスが十分に発揮されない可能性があります。

私は住宅こそ、この環境を支える最も重要なファクターであると考えています。

つまり住宅を、将来的に価値を生み出し続ける源泉である「人」の物理的環境、心理的環境、そしてバランスの取れた生活を支え続けるための重要なファクター、いわば「資産を生み出すツール」としてとらえたいと思うのです。

私たちは、「住まう人々が将来にわたり生み続ける可能性を引き出すために、住宅が兼ね備えていなければならない要素」を家づくりの軸として位置付けています。

適切な温度や湿度、大きさと静かさ、必要かつ十分な照明、効率的でシンプルな設備、整理されたスペース、それらを統合する美しさなどのことです。

住宅を単体の資産と考えるだけではなく、そこに住まう人々の無限の可能性を引き出す場としての資産と考えたいと思うのです。

この場はたとえ時間がすぎても、あるいは世代を超えても変わることはありません。
住まう人々の可能性を支え続けた家の価値は金額では測れないものだからです。