「都市の中の村」をめざして ― マンハイムのフランクリン・ビレッジ

ドイツ南西部の都市マンハイム。その一角に広がる140万平方メートルもの広大な土地は、かつて米軍基地として使われていました。
今、その跡地に生まれ変わったのが「フランクリン・ビレッジ」。

ここでは、環境への配慮と人々の暮らしやすさを両立させた、未来志向の住宅街づくりが進んでいます。

徹底した持続可能性 – 木造建築から電動モビリティまで –

フランクリン・ビレッジの最大の特徴は、木材をふんだんに使った建築です。
木造は二酸化炭素の排出を抑える効果があり、地域産の木材を活用することで持続可能性にも貢献しています。

さらに、敷地内には約2,500本の新しい木が植えられ、夏の強い日差しをやわらげつつ、空気をきれいにしてくれる役割も担っています。

使用されている木材は地域産で、オーストリアで加工されており、持続可能性への強いこだわりが貫かれています。

資源を節約し、エネルギー効率に優れたこの木造建築手法は、欧州地域開発基金(ERDF)とバーデン=ヴュルテンベルク州農村地域省から約50万ユーロの支援を受けました。

住宅地の建設には合計2,700万ユーロ(1ユーロ159円の場合、約42億9千万円)の費用がかかりました。

また、オープンスペースの設計には、生態学的配慮も施されています。

敷地内には、観賞用の植物や住民が収穫できるハーブが豊富に植えられています。
新たに植えられた木々は、将来的に夏の強い日差しを和らげるとともに、CO₂を吸収する役割も担います。

さらに、電動モビリティやカーシェアリングの導入を進め、CO₂排出量の削減を目指しています。
加えて、太陽光発電システムもこれに貢献し、環境に優しいエネルギー供給を可能にします。

世代を超えて暮らせる多様な住まい

住宅は、2~4部屋のアパートや、共有スペースを備えた「クラスターアパート」など多彩なラインナップ。
単身者からファミリー、高齢者まで幅広い世代が安心して暮らせるように設計されています。

さらに、住民同士が自然に交流できる仕掛けも豊富です。例えば、屋上庭園や共同ラウンジを備えた「クォーター・フォーラム」では、料理イベントやワークショップ、異文化交流のフェスティバルなどが開催されます。

自転車修理ができるワークショップや、不要品を分け合える「シェア棚」なども設置され、住民主体のコミュニティづくりを後押ししています。

マンハイムの未来を形づくる街

このフランクリン ビレッジは、旧アメリカ陸軍ベンジャミン フランクリン ビレッジの跡地に建設中の、より大規模な「フランクリン都市開発プロジェクト」の一部です。

このプロジェクトは単なる住宅開発にとどまりません。緑地や教育施設、雇用の場を一体的に整備し、「住む・働く・学ぶ・遊ぶ」がひとつの街の中で完結する設計です。
2025年1月時点で、すでに6,800人以上が暮らしており、将来的には1万人規模のコミュニティとなる予定です。

フランクリン・ビレッジは、持続可能性と社会的多様性を組み合わせた都市開発の新しいモデル。
環境と共生しながら、世代や背景の異なる人々がともに暮らす「都市の中の村」として、これからの街づくりの指針となるでしょう。