シンプルで低コスト。ベルリンに学ぶ、雨水を地面に還す「グリーン排水溝」という発想
ベルリン市とベルリン水道局が共同で設立した団体「Berliner Regenwasseragentur(ベルリン雨水エージェンシー)」。その団体が2025年3月に公開した記事をもとに、現地の取り組みをご紹介します。
シンプルで低コスト。グリーン排水溝(雨水浸透型排水溝)とは
ベルリン・ミッテ区の道路・緑地局は2024年、区内で初めてとなる「グリーン排水溝(Grüner Gully)」を5基完成させました。その仕組みと狙いについて、局長のダニエル・キーク氏に話を聞きました。

グリーン排水溝とは、どのような設備ですか?
専門用語では「グリーン道路排水溝」と呼んでいます。簡単に言えば、既存の排水溝のまわりに雨水を浸透させるスペースを設けたものです。ジンガー通りでは、排水溝の周囲のコンクリートとアスファルトをはがし、地面を50〜60センチの深さまで掘り下げました。そこに、水を通しやすい土壌を入れ直しています。まず自然の砂層の上に45センチの基層土を敷き、さらにその上に10センチの植栽層を重ねました。植物は乾燥に強い種類を選んでいます。今回は、赤みを帯びたフェザーグラス(Federgras)と、黄色い花をつける落葉性の小低木キンロバイ(Fünffingerstrauch)を植えました。

この地区では舗装を減らす取り組みを進めていますが、グリーン排水溝が中心的な役割を担うのはなぜでしょうか。
私たちが目指しているのは、市街地を涼しくすること、緑を増やすこと、そして既存の緑地の質を高めることです。舗装をはがして下水道から切り離すなら、道路排水溝の周辺がいちばん効率的です。雨水は自然とそこに集まってくるからです。その雨水を下水道に流したくないなら、どこかで緑地へ導いてやる必要があります。だとすれば、排水溝のまわりに直接その仕組みをつくるのは、ごく自然な発想でした。ここで雨水が浸透・蒸発すれば、夏の暑い時期には周囲の気温を下げる効果も見込めます。おまけに、樹木の根は水のある方向へ伸びる性質があるので、まわりの木々にも恩恵が及びます。
どのくらいの舗装を撤去すれば、どのくらいの効果が出るのでしょうか。
ジンガー通りに設けた5基のグリーン排水溝の場合、路面のわずか5%を撤去しただけで済みました。それだけで、降った雨水の80%が地中に浸透し、下水道には流れ込まなくなったのです。雨水をすべて浸透させようとするなら、既存の舗装面積の20〜30%を撤去する必要があります。とはいえ、人口密度が高く土地の取り合いが激しい都市部では、そこまでの規模で進めるのは簡単ではありません。
排水溝のまわりには、もともとゆるやかな勾配がついています。そのため、高さを調整する工事も要りません。つまり、比較的小さくシンプルな工事で、大きな効果を得られるということです。
この「80%」という数字は、どのように導き出したのですか。
最初は、経験にもとづく見立てにすぎませんでした。その精度を確かめるため、雨水対策を専門とするRegenwasseragenturに評価を依頼しました。浸透層の深さを変えながらモデル計算とシミュレーションを重ねた結果、私たちの見立ては裏付けられました。この結果が、この取り組みを本格的に進める自信につながっています。
グリーン排水溝1基あたりの規模はどのくらいですか。
1基あたりの面積はおよそ25平方メートル、駐車スペース2台分ほどです。場所によっては、利用者との調整が必要になることもあります。ただ、ジンガー通りでは問題になりませんでした。近くに学校があり、その区間はもともと車両通行止めだったからです。

導入にあたって、どのような事前準備が必要でしたか。
グリーン排水溝は、下水法上の「浸透施設」には該当しません。そのため、特別な許可は必要ないのです。とはいえ、土壌や水の保全が重要であることに変わりはないので、関係当局とはしっかり調整しました。ジンガー通りでは、雨水が安全に浸透することを確かめるため、土壌検査も実施しています。
今後、グリーン排水溝はさまざまな場所に広がっていくのでしょうか。
設置対象は、幹線道路ではなく副道に限定する計画です。通常なら、数か所の土壌調査で十分です。ただ、かつて工業地帯だった場所では、より慎重な調査が必要になります。雨水は表層土である程度ろ過されますが、大通りは排水に含まれる汚染物質が多く、地中への浸透には向いていません。

地下の配管などへの影響はありませんか。
私たちが掘る50〜60センチの深さには、基本的に配管はありません。ただ、ベルリンのインフラは長い年月をかけて拡張されてきたので、この深さに通信ケーブルや電線が通っていることもあります。浸透機能そのものへの影響はありませんが、掘削の際に傷つけないよう注意が必要です。
導入にはどのくらいの費用がかかりましたか。
掘削、残土の搬出・処分、植栽、そして初期の育成管理まで含めて、1基あたり税込みで約7,000ユーロでした。1ユーロ=178円で換算すると、約125万円です。同じ量の雨水を下水道から切り離す他の方法と比べれば、はるかに低コストです。しかも、雨水を最初から下水道に流さない仕組みにするほうが、あとから貯めるための大型貯水管を設置するよりも、コストをぐっと抑えられます。
資金はどのように確保したのですか。
このプロジェクトでは、ベルリンの特別予算「都市美化対策プログラム」を活用しました。このプログラム自体は、現在は終了しています。ただ、多くの再開発・都市更新地区には、気候適応のための予算が別途用意されています。
今後の展開について教えてください。
今年中に、少なくとも50基の新たなグリーン排水溝を設置する予定です。設置場所はまだ確定していません。私たちが常に大事にしているのは、統合的なアプローチです。道路工事などで地面を開けるタイミングに合わせて、グリーン・グリッドを組み込めないか、そのつど検討しています。こうしたプロジェクトは、比較的短期間で決まることが多いのが実情です。そこで今は、標準的な設計プランを用意しているところです。配管業者や道路管理者にすぐ提供できるようにしておけば、現場でゼロから設計を考える必要がなくなります。簡単な調整だけで導入できるようになるはずです。なお、グリーン排水溝を設置しても、計画・施工の工期が大幅に延びることはありません。
出典:Berliner Regenwasseragentur「Einfach und günstig: Der Grüne Gully」(2025年3月) https://regenwasseragentur.berlin/magazin/gruene-gullys-in-mitte/
