民家ということ
ディレクターのNさんに初回エセーの原稿を送ってみたら、ま、いいんじゃないですか、とへともけともつかない返事が返ってきておもしろかったです。
ただしSEO対策はきちんとしましょう、ということなので今回は民家について考えてみることにしました。
ところでSEO(Search Engine Optimization)は「検索エンジン最適化」と訳すらしいです。
Wikipediaによると「検索エンジンのオーガニックな検索結果において、特定のウェブサイトが上位に表示されるよう、ウェブサイトの構成や記述などを調整すること」はて?です。
ディレクターのNさんによると、できるだけたくさんの人に読んでもらうにはテーマが大切、みんなが検索しそうなテーマを選ぶこと。
はたして民家ってそうなのか、どうも違う気がしてきました。
先日そのNさんがこういうWEBマーケティングの基礎知識みたいな内容で社内全メンバーにレクチャー(もちろんWEB会議で!)して、僕は仕事の関係で出席できなかったのだけれど、みんな為になったと言っていました。
民家。
住宅展示場に行こうと思うのですがなにを見たらよいですか、と聞いてくる人がときどきいます。
他社のことはよく知らないのでお好きなようにとしか答えようがないのですが、住宅展示場に行くかわりに民家園に行かれてはどうですか、と思います。
規模の大小はあるのですが、日本にはたくさんの民家園があります。
僕が行ったことのあるところなら豊中市の日本民家集落博物館、川崎市の日本民家園、小平市の江戸東京たてもの園、犬山市の明治村、沖縄県恩納村の琉球村などが大きめの民家園です。
神戸市の異人館もあるいは含めてもよいかもしれませんし、小規模民家展示なら数えきれないほどもあるでしょう。
見学可能な家がたくさん並んでいるということでは住宅展示場も民家園も同じだと思うのですが、僕にとってはまったく真逆の存在です。
住宅展示場で得られるものは限定的(僕にとっては!)で、あまり長居したくないのに対して民家園は何度行っても常に発見があり飽きることがなく、できればずっとそこにいたいと思います。
なにがちがうのか。
目的がちがうというのはもちろん適当だろうけれどその結論は退屈なので、たとえば「たたずむ場」ではどうでしょう。
モデルハウスだとリビングのソファに座って吹き抜けのあるそこだけ他の壁とちがう模様の壁をボウと眺めてみたり、打ち合わせテーブルで向かいの営業さんのホクロの数を数えてみたり。
いっぽう民家でたたずむ場はほとんどみんないっしょです。
縁側です。
眺める先がちがうのです。 民家でたたずむ僕は民家を見ているのではなくて、ある特定の美意識に包まれながら自然を眺めているのです。
それが心地よい。
さりげなく次のテーマを出してみました。
「美意識」です。
住宅を美意識という観点からわけることがあります、而して
・特定の美意識の上に成り立っている住宅
・住宅とはこういうものという慣習のなかでつくられる普通の住宅
この区分は僕たちとっては意識すらしない程度まで当然の認識なんだけれど、こうやって言語化すると案外新鮮に思いませんか。
すべての民家とはいいませんが、少なくとも民家園にあるような民家は美意識のなかにあります。
ちなみに茶室や数寄屋はその美意識が極限的に高いといってよいのでしょう。
実は家づくりのいちばん最初の「別れ道」はここじゃないかなと思ったりします。
別に古民家や数寄屋あるいは建築家の設計した家じゃなくてよいのだけれど、美意識があるかどうか、はとても大切なんだと思います。
それどうしたらわかるの?という人はなんとなくワクワクするか、というところから始めたらよいと思います。
センスは美意識とはまたちがいます。
センスは人それぞれ、人の数だけありますが、美意識は美しくありたいと思う気持ちなのでひとつです。
だから「普通の住宅」を住まい手のセンスで素敵な家にすることはもちろん可能ですし、そんな 例はいくらでもあります。
でもせっかくならはじめから美意識のある家づくりをしたほうが、いいです。
written by NAGAKI