4ZKBって何? ドイツの暮らしが見えてくる住宅事情

ドイツの住宅について、ドイツ外務省のウエブサイトdeutschland.deの 2021年の記事をご紹介します。


■ ドイツの典型的な住まいとは?

「4ZKB」は、ドイツの賃貸住宅によく見られる略語です。これは「4つの部屋、キッチン、バスルーム」を意味し、もし最後にもう1つ「B」がついていれば、それはバルコニー付きというちょっと贅沢な仕様を表します。
典型的なレイアウトでは、まず玄関ホールがあり、そこにはコートラックが備え付けられています。
その奥にリビングルーム、寝室、子ども部屋、キッチン、バスルームが続きます。
ドイツの家庭を訪ねると、まず玄関ホールで迎えられ、靴を脱ぐかどうかを確認するのが一般的。
その後、リビングに案内されてソファに座るよう促され、ドイツらしい“居心地のよさ”を感じることができます。
リビングには写真や絵、観葉植物、装飾品が並び、住む人の個性がよく表れています。
最近では白いウッドチップ壁紙に代わり、鮮やかな色づかいの壁が主流になっています。

■ 「わたしの家は、わたしのソファ」

ある調査によれば、ドイツ人が最も好む家具は「ソファ」。
平均して1日3時間をソファの上で過ごすそうです。
リビングには薄型テレビとコーヒーテーブルがセットになっているのが一般的。
かつては定番だった「ウォールユニット家具(壁一面の収納棚)」は、デジタル化の進展とともに姿を消しつつあります。
本やCD、ビデオをデジタルで保存できるようになったためです。
また、最近はキッチンが再び家族や友人との「コミュニケーションの場」として注目されています。
スペースがある場合、キッチン中央に大きなダイニングテーブルを置き、みんなで料理を楽しむのが新たな暮らし方の一つです。

■ 地下室は当たり前

ドイツの集合住宅には地下室がついているのが一般的です。
住まいに収まらない荷物を収納する場所として重宝されており、賃貸住宅であっても地下に個別に鍵がかけられる収納スペースがあります。

■ プライバシーを大切にする暮らし

多くのドイツ人にとって、自宅は「プライバシーを守る聖域」です。
窓にはカーテンをかけ、庭にはフェンスを設けるなど、外からの視線を遮る工夫をしています。
突然の訪問はまれで、たとえ親しい友人でも事前に連絡を入れるのが礼儀とされています。

■ 日常と「夢の住まい」

ドイツでは多くの人が集合住宅の賃貸物件に住んでいますが、「小さな家と庭付きの暮らし」に憧れる人も少なくありません。
しかし、近年の大都市圏では不動産価格の急騰により、マイホームの夢を実現できるのは地方が中心。

田舎での暮らしを選ぶと、長時間の通勤が必要になることもしばしばです。
それでも、少しの勇気と工夫次第で、個性的な住まいの夢を実現することも可能です。
たとえば、ベルリンやライプツィヒ、ハンブルク周辺では「ハウスボート(住居用ボート)」のコミュニティがいくつか誕生しています。

■ 狭くても心地よく暮らす工夫

第二次世界大戦後、ドイツでは1人あたりの居住空間が着実に広がってきました。
現在では平均して46平方メートルが1人分のスペースとなっています。
しかし、都市部では住宅不足と価格高騰が深刻化しており、市街地に住むためには狭い空間での生活を選ぶ人が増えています。
こうした背景から「小さな空間を快適に使うアイデア」がトレンドになっています。

■ 学生にとっての住宅事情は?

大学のある都市では家賃の高さが学生にとって深刻な負担となっています。
たとえば、ミュンヘンでは30平方メートルの学生アパートの家賃が月額634ユーロ。
一方、ライプツィヒではその半額程度です。
学期の始まりにはシェアアパート(WG)も非常に人気で、空き部屋を見つけるのは至難の業です。
こうした状況のなかで注目されているのが、建築家ヴァン・ボー・レ・メンツェルが設計した「100ユーロハウス」。
6.5平方メートルの2階建ての小さな家には、ベッドやテーブル、調理スペース、トイレまで備えられており、暖房やインターネット込みで家賃は月100ユーロ以下。
都市でも手頃な住宅が可能であることを示しています。

<参考> 数字で見るドイツの住まい事情(2021年時点)

* ドイツ人の54%が賃貸住宅に住んでおり、持ち家率は46%。これはヨーロッパで最も賃貸率が高い国のひとつです。
* 家賃は地域によって異なりますが、月収の25~33%を占めます。
* 家賃が最も高い都市はミュンヘン、次いでフランクフルトとシュトゥットガルト。
* 1人あたりの平均居住スペースは約44.6平方メートル。
* 多くの人が10戸未満の集合住宅に住んでいます。約4分の1が大規模な団地や高層ビル、3分の1が一戸建て住宅に住んでいます。
* 平均的な世帯人数は2人。
* 約6人に1人は一人暮らし。
* 3世代以上が同居している家庭は、全体のわずか0.5%です。

ドイツの住宅事情は、日本とは異なる価値観や暮らし方が色濃く反映されています。
個人のプライバシーを重んじながらも、機能的で居心地の良い空間を大切にするドイツの住宅文化は、住まいの在り方を考える上で大いに参考になるものです。