鹿の子台の家 -鹿の子の台分譲住宅の設計手法-

分譲住宅らしくない分譲住宅をつくりたい。

ふだんはドイツの高性能樹脂サッシと無垢フローリングを使って高性能なデザイン注文住宅「ドイツの家」を設計施工している私たちですが、機会があれば分譲住宅にチャレンジしてみたいと思っていました。
たまたま神戸市北区の鹿の子台によい土地を見つけることができました。
駅や学校やスーパーにも近く、なにより5年後には徒歩圏内に三田市民病院と済生会兵庫県病院を統合した急性期医療や災害医療の充実した大型総合病院ができる安心安全の立地です。

東西に長い土地はその南北は隣地に面していますが、東西は両方とも道に面していて、東側は広めの生活道路、西側は高低差をもつ幅20メートルの静かな幹線街路で抜け感があり、光と風と眺望をたくさん受けとることができそうです。

さて、どんな家をつくろうか。
駐車場は並列で2台分を生活道路側にしっかり確保したい。
土地の形と道路付けを考えると東西からの採光通風、東西に長いカタチになりそうです。

分譲住宅には価格・立地・部屋数が大切だと言われていることは知っています。
価格は頑張るとして、立地は申し分なし、部屋数はどうしようか。
2LDKより3LDK、それより4LDKが売れるらしい。
でも大は小を兼ねる、とは限らない。
限られた面積のなか不必要な部屋は他の部分の豊かさを奪ってしまう。
議論の末、子ども室の間仕切りを可変式として、2~3LDKとすることにしました。

次はその条件を満たすプランニングです。
私たちがふだん設計施工している注文住宅と分譲住宅との違いはなんだろう。
注文住宅はその場所に適したたったひとつの解を求めるのに対して、分譲住宅は汎用性を求めてどんな場所でも建てることができるようにする。
だから分譲住宅はどれも同じように思えてしまい、もしそれが分譲住宅の限界を示しているとすれば、やはり注文住宅の手法がよいのではないか。
その場所だから生まれたプランニング、つまり分譲住宅らしくない分譲住宅、です。

諸々計算のうえ、延床面積は100㎡程度であることはすでに決まっていました。
私たちは家は大きいほうがいい、天井は高いほうがいいと考えています。
決められた面積をいかに大きく感じてもらえるか、天井をどうしたら高くできるか。

私たちは動線に注目しました。
一般的に住宅における動線というのは家事楽と関連させて、いかに短くするかという観点から考えられています。

それを逆手にとって、100㎡の床面積に対して最大限に長い動線を考えました。
つまり1階は東から西まで(階段を介して)2階は西から東まで、さらにLDKを2階とすることで、東西に長い建物を各階横断するような仕掛けです。
東西の長さは約9.5mと計算していましたので、この動線は多少の曲がりを加えると約20mとなります。

もしこの住宅が平屋で、その間口が20mならそれはかなりの豪邸です。
つまりこの住宅はいったんなかに入ると豪邸並の広がりをもつということです。

動線の仕掛けで2階にLDKを配置することにしましたが、それは同時に天井高を高くすることにもつながります。
北側の高度斜線が厳しいこともあり、1階の個室群の天井高はできるだけ低く設定してLDKの天井高を高くすることにしました。

また私たちは1階の廊下の幅にも注目しました。
一般的な廊下は78㎝程度の幅となっており、このサイズでは「通る」以外の用途はありません。
考えてみると「通る」だけの廊下とはなんとももったいないことでもあります。
私たちは廊下をやめて幅169㎝の空間をつくり、多目的なホールとしました。
これだけの幅があれば、「通る」以外にもいろいろな使い方ができて合理的です。
さらにこのホールの壁にはオープンな棚をたくさん設けました。
突きあたりの階段の棚にたとえばお気に入りの書籍や漫画などを置いていただければ、階段に
座って読書にふけるなんていうことも可能です。
(じつは階段は読書にぴったりなんです)

吹抜けの階段には大きな窓を設けて光が差し込むようにし、その光に向かうホールの天井は濃いグレー、床は赤みがかった天然リノリウム張りとすることで洞穴感を演出し、差し込む光をよりはっきりとさせました。
その光に導かれて階段を上がると、高い天井のLDKが一気に広がるという仕掛けです。
またLDKの壁の一部には床に使っている無垢フローリングを張っています。
これも分譲住宅らしからぬ様子になりました。

分譲らしからぬ、といえば壁紙には一般的なビニルクロスではなく不織布に水性塗料をかけたエコフリースを、断熱材には一般的なグラスウールではなく木質繊維のセルロースファイバーを採用しています。
調湿効果と防音効果、防虫効果なども期待できる組み合わせで、これらはふだん設計施工している注文住宅と同じ仕様です。
もちろん私たちの基本建材であるドイツの高性能樹脂サッシと無垢フローリングも採用されています。

ドイツ的合理性からベランダはつくりませんでした。
家事のうち家ごとの差が大きいのは洗濯家事ですが、ガス乾燥機「乾太くん」と浴室乾燥を装備して、洗濯家事の①洗う②干す③取り込む④畳む、から②干す③取り込むをなくしました。
浴室乾燥は、「洗濯機は使えてガス乾燥機は使えない」という一部の衣類のためのもので、基本はガス乾燥機で洗濯家事の合理性を図ります。
したがって物干し場としてのベランダは不用です。

キッチンの形式は壁付けI型としました。
新築分譲住宅の約70%以上が対面、特にペニンシュラ型が多いそうですが、私たちの注文住宅では、壁付け(I型、L型)、アイランド型が同じくらいの割合をしめ、つぎに対面(ペニンシュラ型)がきます。
一般的な割合と比較するとペニンシュラ型がかなり少ないと思いますし、料理好きなお客様は壁付けを好まれる傾向にあるようです。
壁付けI型にしたのは長いLDKの豊かな動線を断ち切りたくないのと、ダイニングテーブルによります。

ダイニングテーブルについて、私たちは可能なかぎり大きなテーブルをおすすめしています。
そこでは食事以外にも団欒、家事、仕事、勉強、趣味などさまざまな種類の行為が行われるはずで、それはダイニングテーブルと呼ぶべきものではないと思っているのです。
私たちはロングテーブルと呼んでいます。
そのロングテーブルを動線に沿って配置してもらうためにもキッチンは壁付けI型が適しているのです。
キッチンはトクラスから品のよいものを選びました。

こうしてドイツの家の分譲住宅は完成しました。
分譲住宅らしくないこの家は私たちの考える「住まい」を実現したドイツの家のコンセプトハウスとなりました。
ご購入を検討される方はもちろん、ドイツの家のコンセプトを体験してみたい方もどうぞ見学にお越しください。

 

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written by NAGAKI