生成AIと家づくりの距離感

すっかりおなじみになった生成AI。ドイツの家でも使いどころを模索中です。
 生成AIでできたら一番嬉しいのが、申請時に必要な外観パースの作成。お家を建てる地域によっては景観を守るためのルールがあって、今回建てるお家はちゃんとルールを守っているから建築させてねと自治体に申請する必要があります。その際に外観パースを添付するのですが、CGパースを作成するソフトってパソコンの中で手作業で模型を作るようなものなので、結構手間がかかります。「なんで屋根から壁が突き出てしまうんだ…」と頭を抱えることもしばしば。各高さは○〇で、外壁は○色で屋根は○色で~…と、諸条件を入力すれば自動でCGパースが出来上がるわけではないのです。
 生成AIで外観パース作りにトライしました。立面図をもとに外観パースを作ってくださいと依頼します。依頼文(プロンプト)も生成AIに考えてもらいました。読み込ませた立面図は、総2階建て、切妻屋根のコンパクトですっきりしたデザインのプランです。

最初に出来上がったのがこちら…なんで平屋になった?!プロンプトに、この家の基本条件を追加します。

う~ん、なぜ勝手にアレンジした?プロンプトに、図面に忠実に、勝手にアレンジしないでと追加します。

 

総2階建てだけど、窓も玄関も全然違う!
 生成AIご本人によると、『私はPDF内のテキストデータは読み取れますが、図面の線画(ライン)から正確な3D形状を認識することはできません。そのため、生成したパースは読み取れたデータからの形状の推測によるマッスモデルとなります。窓の位置や屋根の勾配は図面と完全に一致しない可能性があります。』とのこと。
 申請用の外観パースは図面との整合性が求められるので、現時点の生成AIはまだ使える段階ではありませんでした。

 ちなみにドイツの家ではファーストプレゼンでCGの外観パースや内観パースをご用意していません。その代わり、平面図、立面図、断面図、配置図を丁寧に作成します。本当に良いプランは、図面を見ただけでお客様自身が暮らしを思い描くことができると考えているからです。CGだと色やインテリア、質感まで具体的に表現されるのでオシャレな画を作ることができますが、そこにばかり目がいってしまい、ドイツの家が大切にしている「空間」は伝わりにくくなってしまいます。白黒の線だけで表現された図面にお客様の思いや想像力が掛け合わさって、そのご家族だけのお家が立ち上がっていくことが、お打合せの醍醐味だと感じています。
 けれど図面だけではイメージしにくい場合もあるので、そんな時は手書きパースをご用意しています。目的は、そこがどんな空間なのか伝えること。手書きなので描くものの取捨選択が自分ででき、その空間の心地よさや面白さをダイレクトに表現できると思っています。

こちらの手書きパース図、窓、床材、グリーンの着色は生成AIにしてもらいました。ちょっとかわいくなって、暮らしの温度感が表現できて気に入っています。

 次の生成AIの使いどころ…竣工写真への家具の配置です。
 お家の写真は家具があってこそ、見た人が暮らしを想像できて「このお家すてき!」と感じてもらえるというもの。ただ、どのお家もお客様の大切なお住まい。時間も限られる中、家具有で竣工写真を撮影するのはなかなか難しい。
 そこで、生成AIに竣工写真に家具を配置してもらえると助かります。生成AIはすでにあるものを組み合わせることは得意なんだとか。

例えばこちらは、テレビ、テレビボード、ソファの配置を指示したもの。そうきたか~。こちらのリビング、写真正面がテレビ設置場所なのです。

テレビの位置を移動してもらいました。動線が遮られるからか、指示をしていないのにテレビボードが消えました。それもあってコーヒーテーブルのシンプルさが目立って、この空間に合っていません。こうした家具のミスマッチは、具体的な家具の指示をすれば解決できそうです。

ダイニングセットを配置してもらいました。今回は「ラグジュアリー」「テーブルの上に花」と指示したのですが、そんな雑な指示でも、家具の色をキッチンに揃えて落ち着いた雰囲気にしてきたのはすごいと思いました。ダイニングセットという複雑な画を、パースを狂わせずに配置しているのもさすがです。

 生成AIを触ってみてわかったのは「誰に何をどう伝えたいか」をこちらがわかっていないと、何も作れないということでした。漠然と「オシャレなやつよろしく」と言ったって何をどうしていいかわからないのは人間も生成AIも同じです。特に「誰のために」「あの人に喜んでもらいたい」が無いと、手書きであれCGであれ良い画はつくれないと実感しました。こうした設計者の意図が明確にある場合の補助として、生成AIは便利な道具だと思います。
 生成AIに申請用パースを作ってもらっているときの、自分の気持ちも面白かったです。「ここがこの家のかっこいいところなのになんで変なアレンジしちゃうの~!」とプロンプトを試行錯誤しているうちに使用上限を迎えてしまい、続きはまた明日…。荒れました。その点手書きは「こういう絵が欲しい」というゴールが私の頭の中にあって、それを描くのも自分なので心穏やかです。面倒くさい仕事(今回の場合、申請用の外観パース)だけをAIに押し付けようとしても上手くいかないなんて、なんだかそれも含めてSFっぽいな、なんて思いました。