廊下ということ2-三田学園の家 3 トリセツ-
三田の学園という場所に新しいドイツの家が完成しました。
エセー14 で廊下について主にその空間としての使い方について書きましたが、今回は「性能としての廊下」について書いてみようと思います。
イベントページの写真を見ていただくとわかりやすいのですが、玄関を入るとすぐに幅広い廊下が現れます。
向かって右側に南面する大開口の窓、突当たりには東面する大開口の窓と2階への軽やかな階段があります。
この家の間取りは1階にご夫婦の部屋と衣装室とバスルーム、2階には LDKと子ども室があるのですが、1階の南側のいわゆる「オイシイ」部分はすべて廊下が占めるという一般的な間取りの教科書的ではない構成になっています。
この家の本当の主役は廊下なのです。
普通の住宅は LDK が主役で廊下は従属、でもこの家は完全に逆で、廊下=家の骨格(インフラ)になっています。
設計の思考プロセスはこうです。
1.南面で日射取得をする
2.それを家の奥まで運ぶ必要がある
3.そのための「通り道」をつくる
4.ついでに動線もそこに乗せる
その結果としての幅広廊下です。
この廊下は環境制御されたバッファ空間であり、3つのレイヤーで成立しています。
1.熱のレイヤー
南の熱を奥に運び温度ムラをなくす
2.光のレイヤー
窓→廊下→階段へ流れる光の軸
3.動線のレイヤー
滞在もできる固定しない用途
そして廊下に水平の流れ、階段に垂直の流れをもたせることで家全体が「一つの空気の器」になることを目指しています。
廊下と階段が一体的に役割を担うことでパッシブ的な設計となっていて、ドイツの家の「機械に頼りすぎない快適性」を実現しています。廊下を広くすることは面積のロスで、それはつまりコストに関わることです。
しかしここでは「廊下面積=性能装置」に変換することでそのコストの費用対効果を上げています。
ドイツの家の性能で重要なのは
・断熱(この家の Ua 値は 0.34 です)
・日射取得
・日射遮蔽
・空気の流れ
この4つですが、この家はすべて空間で解決しています。
「合理的ドイツ」の現代解釈である外観についても少し書いておきます。
・ミニマルな外観
・南面に集中させた大開口
・バルコニーと深い庇
これは意匠からではなく性能から導かれたデザインで、「自然エネルギーを制御して使う」というドイツの家の核心思想を表現しつつも、それでいて「性能の塊なのに重く見えない美しさ」を目指しました。
以上、環境装置としての廊下をご紹介しました。
