病院の建物が人々の健康をどう助けるか。「ヒーリング建築」という考え方
人に寄り添う建築「ヒーリング建築」について、独シンドラー社の2025年10月の記事をご紹介します。
ヒーリング建築 病院の建物が人々の健康をどのように助けるか
病院の雰囲気を重苦しいと感じてしまい、できることなら近づきたくないと感じる人が少なくありません。
しかし、フライブルク、シュトゥットガルト、ハウスハムにある病院は、必ずしもそうではないようです。
実は、これらの病院では、「ヒーリング建築」という考え方が採用されているのです。
「ヒーリング建築」とは何か――そして、何をもたらすのか
「ヒーリング建築」とは、設計された環境が身体の回復を支援するよう、医療施設を意識的かつエビデンスに基づいて設計された建築です。
その効果は、患者にとって実感できるものであると同時に、看護スタッフ、医師チーム、そして家族や付き添いの人々にとっても重要なものです。
このアプローチは、建築物が単なる背景としてではなく、ストレスを軽減し、人間の尊厳を保つという役割を積極的に担うという前提に基づいています。

この分野でよく引用されるのが、建築学者ウルリッヒ氏による研究です。
1984年に科学誌『サイエンス』に発表されたこの研究によると、緑の見える景色の病室に入院した外科手術患者は、緑が見えない患者と比べて、鎮痛剤の使用量が少なく、うつ状態に陥る頻度も低く、退院も早かったことが示されています。
これは、周囲の環境そのものが治癒に寄与することを示す、初期かつ信頼性の高い証拠とされています。
この考え方から、いくつかの中核的な原則が導き出されます。
まず、日光と自然との視覚的なつながりは、体内の24時間リズム、いわゆる概日リズム(睡眠や体温、血圧、心拍、多くのホルモン分泌、免疫機能、代謝など、私たちの大部分の生体機能を司る約24時間周期のリズム)を安定させ、睡眠や健康を促進します。
現在では、最新の研究や設計ガイドラインで、病室の窓の配置や採光計画について具体的な推奨事項が示されています。
また、明確な平面構成、短い動線、分かりやすい案内システムといった「方向性」と「動線計画」は、認知的な負担を軽減し、病棟運営の日常における安全性を高めます。
騒音の少ない良好な音響も、患者だけでなくスタッフにとっても、慢性的なストレスを防ぐ重要な要素です。
さらに、温かみのある色彩や、耐久性と衛生性を兼ね備えた素材は、「いかにも病院らしい」印象を与えることなく、緊張を和らげ、信頼感を生み出します。
病院に設置されるアート作品はしばしば「ヒーリングアート」と呼ばれ、不安の軽減や方向把握の助けとなり、場への親しみや帰属意識を生み出す効果があります。
加えて重要なのが「参加」です。患者、家族、医療チームが計画段階から関与することで、空間やプロセスが実際の運用に適したものとなり、日常生活で治癒効果がより確実に発揮されるようになります。
ヒーリング建築の3つの事例
①フライブルク小児・青少年病院
ヒーリング建築の比較的新しい事例として、2024年9月に開院したフライブルクの小児・青少年病院があります。
この新築施設では、それまで分散していた小児・青少年医療の各部門が、大学病院の敷地内にある一つの拠点に初めて集約されました。
さらに女性クリニックと直接つながっているため、移動距離が短くなり、業務の流れが簡単になり、家族にとってもわかりやすく直感的な案内が可能になっています。
総床面積約25,000平方メートルの建物には、約156床が設けられています。
設計面では、豊富な自然光、子どもに配慮した色彩やビジュアル表現、そして滞在や交流のための空間が重視されています。
親のためのラウンジから、教室や共同スペースまで、多様な場が用意されています。
計画には子ども、保護者、職員が参加し、その結果、分かりやすい動線、居心地の良い待合スペース、そして病院の中でも家族としての日常生活を感じられる空間が生み出されました。

②ロバート・ボッシュ病院(シュトゥットガルト)
ヒーリング建築のもう一つの例が、ボッシュの創立者ロバート・ボッシュによって1936年に設立されたシュトゥットガルトにあるロバート・ボッシュ病院です。
同院では「ヒーリング建築」プログラムの一環として、過去25年間にわたり、50名以上のアーティストがさまざまなプロジェクトを実施してきました。
ここでのアートは単なる飾りではなく、患者や訪問者、職員の不安や迷いを減らすための工夫です。いわば「心の道しるべ」として機能し、安心感を与えています。
このプログラムはドイツ国内でも先進的な取り組みとして知られ、科学的な検証が行われるとともに、キャンパス内での特別ツアーなどを通じて継続的に紹介されています。





③アガタリート病院(ハウシャム)
アガタリート病院は、ドイツにおけるヒーリング建築の分野で先駆け的な存在です。
1998年の完成以来、この病院は「小さな町」として機能する病院のあり方を示しています。
建物は7つのパビリオン型の棟に分かれており、短い通路でつながっています。
敷地は周囲の自然に開かれ、景色を楽しめるように設計され、人にやさしいスケールで作られています。
これにより、ストレスや空間的な圧迫感を減らす効果があります。
パビリオンは、治療棟、複数の病棟、精神科部門に分かれて構成されています。
アガタリート病院は、専門家や博物館関係者の間でも模範的なプロジェクトとして評価されており、最近ではミュンヘン工科大学建築博物館での展覧会でも紹介されました。
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出典:Schindler社
https://magazin.schindler.de/architektur/heilende-architektur-wie-klinikbauten-dabei-helfen-gesund-zu-werden
