階段ということ2-大原の家トリセツ

神戸の大原という場所に新しいドイツの家が完成しました。
施主のお客様と知り合ったのは約3年前の目神山の家の完成見学会でした。
見学会で目神山の家の破風が美しいと言っていただき、細かなディテールの美しさを共有できたことに驚きと嬉しさを覚えたことを思いだします。

それから1年以上いろいろと悩まれたことと思いますが、柏尾台の家の完成見学会に再度お越しいただいたときにそのデザインをたいへん気に入っていただき、この家をギュッと凝縮したような家をお願いしますと設計が始まりました。

柏尾台の家は 60 坪を超える大きさをもっていましたが、ご提案したのは 31 坪の小さめの家でした。
大手ハウスメーカーを検討された際に、メーカー側からは 35 坪程度の提案があったようで少し戸惑われていたようです。

ただお客様は「それなりによい住宅性能」ではなく「最高の住宅性能」を私たちに期待されていること、ドイツの家のサイズは床面積だけでは測れないものであることをご説明して、深くご納得いただきました。

ドイツの家が積極的におすすめする2階リビングはすんなりと決まり、あとはお客様に期待いただいた階段のデザインに時間をかけたように思います。

イベントページの写真を見ていただくとわかりやすいのですが、当初より玄関土間につながる階段に建築体験を集中させようと考えていました。

家に入った瞬間に「この家いいな」と思っていただきたく、31 坪のうち玄関と階段に 6 坪もの大きさを使っています。
階段の間口は 2.5 メートル、一般的な家の 1.8 メートルと比べてかなり贅沢な選択です。

むしろ小ぶりな家だからこそ、この贅沢な選択が空間に響くのだと思っています。
階段はできるだけシンプルに、逆に空間は重厚さを感じられるようにしたい。
土間、無垢板の床、タイルの段床、レンガの壁、スチールの手すりという構成は多種類の要素がうるさくならないぎりぎりのラインを考えました。

とくにタイルの段床は大きく、ひとは段差を自然に見るものなので、そこが「舞台」になります。
つねに階段や廊下は単なる通過動線ではなく、「たたずむ場」であり「建築体験そのもの」だと考えており、この段床はまさに「居場所」をつくっています。
またこの段床によって床の高さが変わると、もとより広い空間がさらに広く感じられます。
また土間と同じタイルで仕上げていることで2階のリビングにとって「中間領域」のような様子となり、住宅の「格」をあげます。

大きな段床では腰掛けたり、季節の飾りをしてみたり、あるいは一時的に荷物を置いていただいてもよいでしょう。

視線の停止点でもあります。
ひとの視線が無垢床から段床そして階段へと自然に流れることを計算した動線視覚設計になっています。
この「舞台」の直上には北側に配置された天窓があり、常に安定した柔らかな光が降りそそぎます。
明るいのはもちろんのこと、階段は蹴込板のないデザインなので、その光が階段の影を壁や段床に美しく描きます。

片方の壁がレンガであることも重要です。
均一的ではないレンガの素材感が視線を奥に導くことで段床の深さを示しています。
また階段の軽さと壁の重さが全体のバランスを整えます。
窓の配置は空間の抜け感を表現し、そのサイズはレンガ壁の天端の線を補完する役割を担います。
窓の外側には外付けブラインドがついており、ブラインドのスラットを自由に作動させることでお好みの視線や光量をつくることができます。

さいごに2階のリビングは 24 帖ほどの大きさと 3 メートルほどの天井高さをもっており、壁付けされたキッチンの長さは 3.8 メートルにも及びます。

これらの要素を 31 坪でまとめることでドイツの家の大きさが床面積では測れないことを証明しています。

▶︎Information

「大原の家」の完成見学は3月21日(土)/22日(日)に開催いたします。

ご予約はこちらから