建築は凍りついた音楽か。共通点をもつ二つの芸術
建築と音楽について、ドイツの建築専門誌Deutsches Architektenblatt(DABオンライン)のヨハンナ・レンツコウさんの記事(2025年9月)をご紹介します。
建築と音楽
芸術は人々の心に影響を与え合います。建築と音楽も例外ではありません。
スイス出身の建築家ピーター・ズントーの「ヴァルスの温泉施設Therme Vals」はどのように人々の心に響くのでしょうか。
あるいはヘンデルの「水上の音楽」はどのように見えるのでしょうか。
建築は、音楽がそうであるように、私たちを言葉にできないほど感動させたり、笑わせたり、涙させたりすることができるのでしょうか。
建築は私の仕事であり、音楽は私の趣味です。
毎日、両方に触れています。たとえば事務所で設計をしているときに音楽を聴いたり、路面電車の中から街を眺めながらイヤホンで音楽を楽しんだり、あるいはコンサートホールで生演奏をじっくり聴いたりします。
> 「建築は凍りついた音楽である」
最近、私は1859年にドイツの哲学者フリードリヒ・シェリングが残したこの言葉に出会いました。
アルトゥール・ショーペンハウアー(ドイツの哲学者、1788〜1860年)も、建築を凍った音楽と表現しています。
これをきっかけに、私は建築と音楽の相互関係をより詳しく考察してみようと思いました。
共通の原理をもつ二つの芸術
私は学部生の頃、教授が建築の設計案の改善点を音楽の原理を用いて説明してくれたときに、非常に感動したことを覚えています。
建築と音楽はそれぞれ独自の専門用語を持っていますが、両者に共通する概念が多いことに気づきます。
たとえば、規則的に配置された柱がリズムを生み、前後の段差や有機的に流れる形状が建築にダイナミズムを与えます。
建築要素の良い比例関係は調和を感じさせます。
リズム、ダイナミズム、ハーモニー、コントラスト、反復、色彩、ヴォリューム、構成――これらは、音楽だけでなく建築にも当てはまるのです。
現代芸術としての音楽と建築
音楽と建築の関係は、私たちの文化史において確固たる一部であり、古代においては現在よりもさらに密接でした。
すでにウィトルウィウス(共和政ローマ末期・帝政ローマ初期に活動した建築家・建築理論家)は、自身の著作『建築十書』で、建築家は音楽理論も理解することが重要であると述べています。
『建築十書』は現存する最古の建築理論書であり、おそらくヨーロッパにおける最初の建築理論書とされています。
建築の比例理論は、音楽の和声理論と直接関係しています。
そのためルネサンス期には、建築の設計を評価する際、音楽理論家や画家が助言者として呼ばれることもありました。
彼らは「世界の調和」を視覚的にも感じられるようにする役割を担っていたのです。
音楽は世界共通の言語として、今もなお驚くべき普遍性を持っています。
社会的な絆を強め、グループの一体感を育み、人々を感動させ、心を動かします。
建築家として私たちも、同じ目標を追求し、同じ対象に働きかけています。
内に静けさを宿す建築
根本的な違いは、建築が空間の中で視覚的に存在するのに対し、音楽は時間の中で聴覚的に存在するという点です。
建築家ピーター・ズントーは「建築の現実は形・質量・空間として現れた具体的なものであり、それが建築の“身体”である」と書いています。
別の場所では、建物の「美しい静けさ」についても語っています。
この静けさには、落ち着き、自然さ、永続性、存在感、誠実さ、そして温かみや感性が結びついています。ズントーの建築はこの静けさを完璧に体現しています。
では、建築は聴覚的に表現され、感じとることができるのでしょうか。
建築の視覚的・物理的・空間的要素を、音楽の聴覚的・非物質的・時間的な要素に置き換えることは可能でしょうか。
「建築は凍りついた音楽なのか」という問いがここに生まれます。
設計すること
建物を設計することは、音楽を作曲することに似ています。
どちらも複数の要素を計画的に組み合わせて全体を構成し、層を重ねながら、全体を支配する構造やリズム、調性に従います。
そして、同じような表現手法を用いることも多いのです。
音楽のために明確に設計された建物、たとえばコンサートホールやオペラハウスでは、この二つの芸術の結びつきが最も顕著です。
現在では設計段階で音響専門家の意見を取り入れ、高度な技術シミュレーションを用いて、観客に最高の音響体験を提供できるよう工夫されています。
音の空間、エルプフィルハーモニー
たとえばエルプフィルハーモニー(ハンブルクのコンサートホール、2017年オープン)では、日本人音響設計家の豊田泰久氏の指導のもと、大ホールを1:10の縮尺で再現し、空間の音響特性が分析されました。
コンピューター計算に基づき、10,000枚の個別に加工された石膏繊維ボードで作られた「ホワイトスキン」が設置されています。
このホワイトスキンは音を拡散させ、2,100席ある客席やバルコニー席のどの位置でも最適な音響を実現しています。
目に見えない詩
技術的な手法に頼るかどうかにかかわらず、感情を呼び起こす「音の空間」をつくり、その構成を目で見たり耳で聴いたりして感じ取ってもらうためには、音楽理論の原則を応用することができます。
空間をひとつの楽曲のように組み立て、光や音の高低によってその空間を整え、動線をメロディのように導き、素材を楽器編成のように選んでいくのです。
建築を体験するということは、視覚や触覚、音、空気感など、さまざまな感覚が組み合わさって生まれる総合的な体験です。
こうした感覚に依存する部分が大きいため、私たちの仕事の本質を言葉だけで説明するのがときどき難しく感じられるのでしょう。
建築には、個々の要素を超えて空間全体が、ひとつの「作品」として感じられる、「目には見えない詩」のようなものがあります。
それは私たちの内側に気分や感情を生み出し、まずは感覚として受け取られ、そしてうまくいけば理解される。
そんな性質を建築が持っているからです。

Hamburg : Baustelle Elbphilharmonie . Probe , Probenpremiere in Gro§en Saal , NDR Elbphilharmonie – Orcherster

25 Chöre auf fünf Bühnen singen in der Langen Nacht des Singens in der Elbphilharmonie. Verschiedenste Laienchöre aus Hamburg (Pop, Jazz, Klassik, Shanty, Kirchenchöre, Vocal Band, Schulchöre und Kinderchöre) sind vertreten.
Die musikalische Gesamtleitung liegt bei Frieder Bernius. Die Lange Nacht des Singens fand am 23.06.2018 statt.



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出典:Deutsches Architektenblatt(DABオンライン)
https://www.dabonline.de/nachwuchs/kolumne-272-architektur-und-musik/
